婚活パーティーを成功させた

「幹事なんて割りの合わない役目を引き受けなければよかった」婚活パーティーの準備に神経をすりへらしながら、Aさんは何度くやんだか知れなかった。でも、「幹事をやってよかった」これが婚活パーティー成功のあとの実感だった。Aさんが、上司から、「婚活パーティーを開きたい。きみ、幹事の役目を引き受けてくれないか」と言われたのは一月中旬のことだった。

「はい、やります」二つ返事で引き受けた時、Aさんは、社の集会ホールを会場に、料理や飲み物は社員食堂のスタッフに頼んでとごく軽く考えていたのだが、上司からさらに、「婚活パーティーは会社に大きな貢献をしたBにふさわしい盛大なものにしたい。上層部の意向であり、Bもそれを希望している」と聞かされた時、「これは大へんだ」身がひきしまるのを感じた。「失敗は許されない」。その日からAさんの準備計画がはじまった。が、なにぶんにも未経験の仕事で大海に小舟を漕ぎだすような心境だった。

驚いたのは、会社から経費か出るわけではないと聞いた時だ。次に驚いたのは。いや、以来六十日間、驚いたり、泣きたくなったり、目方がへったりをいちいち並べていてはキリがない。あまりの苦労に、いっそ地球が爆発しちまえばよいと思ったことが五回、そのたびに、なーに負けるものかと気力をふりしぼったことが五回あったとだけ紹介しておこう。

そして三月下旬。会社の枠を越えて広くみんなに呼びかけた『Bの婚活パーティー』が高名なホテルの広間に四百人を越える出席者を集めて聞かれ、大成功。なかでも、写真とイラストで構成し少々脱線気味のナレーションをつけたスライド『B』は満場の喝采をはくし、また壇上で、長年連れ添った老夫人に向って切々と朗読する感謝の言葉は、列席者すべての涙をさそって圧巻だった。これはいずれもチーフ幹事Aさんのアイディアだった。婚活パーティーの盛大さは社内報にも載り、Aさんの有能な幹事ぷりは全社的に知れわたった。

「それにしても、幹事はなんと”割りの合う”仕事だろう」とAさんは思う。Bはじめそれまで直接会ったこともなかった社長や重役、あるいは社外の高名な人士と語り合う機会が得られたのも幹事の肩書きのお陰なら、会場手配などを通じて未知の分野に知己が沢山できたのも収穫だった。そして何よりも大きな収穫は、「成せば成る」の真理を体験したことで、会社の仕事にも以後一段と打ち込めるようになったことだった。